JyakoTen は、Whisper 等の音声認識結果と正解テキスト(Transcript)を比較し、CER (Character Error Rate), MER (Mora Error Rate), PER (Phoneme Error Rate) を算出するためのツールであると理解しました。
機能としては非常に有用であり、特に日本語特有の「モーラ」や「音素」レベルでの評価を試みている点は意欲的です。
しかし、コードベースには保守性、可読性、拡張性の観点でいくつかの改善すべき点が見受けられます。
本レビューでは、具体的なコードの改善点、潜在的なバグ、および設計上の推奨事項を提示します。
全体を通して、変数名やコメントに多数のスペルミスが見られます。これらは可読性を損なうだけでなく、将来的な検索や置換の際にバグの原因となる可能性があります。
- Phoneme (音素):
phonome->phoneme(プロジェクト全体) - Calculate (計算):
calcurate->calculate(score.py) - Failed (失敗):
faild->failed(score.py) - Overwritten (上書きされた):
overwrited->overwritten(score.py) - Rows (行):
lows->rows(score.py: 低スコアの行を指していると思われますが、一般的ではありません) - Vowel (母音):
voewl->vowel(mecab_utils.py) - Combination (組み合わせ):
convination->combination(mora_utils.py)
推奨: IDEのスペルチェック機能を有効にするか、Code Spell Checker などの拡張機能を使用することを強くお勧めします。
Python 3.5以降で標準化された型ヒント(Type Hints)が使用されていません。型ヒントを追加することで、関数の入出力が明確になり、IDEによる補完や静的解析(Mypyなど)の恩恵を受けられるようになります。
# 例: mecab_utils.py
def get_cer(transcript: str, detect: str) -> float:
...多くの関数に Docstring がないか、不足しています。関数の目的、引数、戻り値についての説明を記述すべきです。Google Style や NumPy Style などの標準的なフォーマットを採用することを推奨します。
特に jyakoTen/utils/mecab_utils.py において、mecab, dic_split, dic_index がモジュールレベルのグローバル変数として定義されています。
これは、プログラムの状態管理を難しくし、テストの並列実行やマルチスレッド化の妨げになります。クラスにカプセル化することを推奨します。
このファイルはエントリーポイントであり、主要なロジックを含んでいますが、責務が集中しすぎています。
score_main関数の肥大化:score_main関数が非常に長く、引数の解析、ファイルの読み込み、スコア計算、結果の出力など、すべての処理を行っています。これらを別々の関数に分割すべきです。parse_arguments()load_transcripts()calculate_scores()write_results()
- ハードコードされたロジック: 特定のユースケースに依存したハードコードが見られます。これらは設定ファイルや引数で制御できるようにすべきです。
if line == "ご視聴ありがとうございました" ...(L170)line = line.replace("1877","センハッピャクナナジュウナナ")(L186)line= line.replace("50-50","フィフティーフィフティー")(L188)
replace_chars関数:str.replaceを繰り返し呼び出していますが、正規表現(re.sub)やstr.translateを使用すると、より効率的かつ簡潔に記述できます。
- 引数定義のコピーミス:
argparseの定義で、--sort_perのhelpがcalcurate mora baseとなっており、--use_moraの説明がコピーされたままになっています (L63)。 - ファイルパス操作:
os.path.joinと文字列操作が混在しています。pathlibモジュールを使用すると、パス操作をオブジェクト指向的かつ安全に行えます。 - ループ変数:
index変数を手動でインクリメントしていますが、enumerateを使う方が Pythonic です。for index, line in enumerate(lines): ...
- クラス化の推奨: 前述の通り、グローバル変数
mecabの使用を避け、MecabWrapperクラスなどを作成してインスタンス変数として保持すべきです。class MecabEngine: def __init__(self, args: str = "", split: str = "\t", index: int = 9): self.tagger = MeCab.Tagger(args) self.split_char = split self.word_index = index ...
- マジックナンバーとリスト:
REPLACE_WORDやSINGLE_WORDSなどの定数リストが長く、コードの見通しを悪くしています。これらは別の設定ファイルか、定数定義専用のファイルに移動するか、あるいはアルゴリズムで生成することを検討してください。 get_best_group関数:args.use_moraなどの引数がそのまま渡されていますが、この関数はargsオブジェクトを知る必要はありません。必要な値(boolean)だけを渡すべきです。
MORASリスト: 手動で定義されていますが、抜け漏れが発生しやすいため、生成ロジックにするか、外部リソースから読み込むほうが安全です。- 複雑な条件分岐:
phonemes_to_mora関数内のif-elseブロックが深く、可読性が低くなっています。ステートマシンとして実装するか、ロジックを整理すると良いでしょう。
- 正規表現の効率:
re.compileを使用しているのは良いですが、split_kanji_dic関数内のループで 1 文字ずつpattern.matchを行っています。これはパフォーマンス上好ましくありません。re.finditerなどを使って、チャンクごとに処理する方が効率的です。
pyproject.toml: 最近の Python プロジェクトとして適切な構成ですが、依存ライブラリのバージョン指定(dependencies)も適切に行われているか確認が必要です(requires.txtとの重複管理に注意)。README.md: インストール手順などが記載されていますが、"pipのは古い。更新が多くてUpdateできない" といったコメントは、ユーザーにとっては混乱を招く可能性があります。開発状況を明確にするか、PyPI へのリリースフローを整備することをお勧めします。
- リファクタリング:
score.pyを中心に、関数分割とクラス化を進める。 - 静的解析ツールの導入:
flake8やmypy、black(フォーマッタ) を導入し、コード品質を自動的に維持する仕組みを作る。 - ハードコードの排除: 特定の単語置換などは設定ファイル (
config.jsonやdict.csv) に外出しする。 - テストの拡充:
tests/ディレクトリを活用し、特にスコア計算ロジックや文字変換ロジックに対する単体テストを充実させる。
以上です。素晴らしいプロジェクトですので、これらの改善によってさらに使いやすく、堅牢なツールになることを期待しています。